【専門家監修】膝の変形・慢性腰痛は歩き方を少し変えるだけ?研究論文から勧める “前足部歩き(FFS)”
当院の患者さんを観察すると、60代後半になると、「膝の内側がズキズキする」「少し歩くと腰がだるくなる」「立ち止まって休まないと歩き続けられない」といった**膝や腰の痛みに関する女性の悩み**を多く聞くようになります。
実はそれらの症状、**日常の「歩き方」を少し工夫するだけで和らぐ可能性**があることをご存知でしょうか?
**ヒールストライク vs フォアフットストライク(前足歩き)**
私たちが普段行っている歩行の多くは、「かかとから地面につく」\*\*ヒールストライク(RFS)\*\*という歩き方です。T Vや医療機関でも紹介されていますね。
一方、近年注目されているのが、「前足部(つま先のつけ根)から静かに接地する」**フォアフットストライク(FFS)=前足歩き**です。
このFFSは、もともとランナーのフォーム改善として知られていましたが、**膝関節や腰部への衝撃を和らげる効果がある**ことから、**変形性膝関節症(OA)**や**腰部脊柱管狭窄症**の保存療法でも注目されています。
**膝や腰への衝撃が変わる!歩き方の違いがもたらす影響**
2021年に発表された研究では、**ヒールストライクよりも前足歩き(FFS)の方が、膝関節にかかる衝撃が有意に少ない**ことが示されました(Kulmala et al., 2013)。
FFSでは**膝を軽く曲げた状態で着地するため、膝まわりのクッション機能が働きやすく、関節の摩耗が抑えられる**のです。
また、別の研究では**前足歩きが腰椎の動きを安定させ、姿勢の前後ブレを減らす効果**も報告されています(Delgado et al., 2013)。
これは、**脊柱管狭窄症による「腰のだるさ」や「長く歩けない」といった症状の緩和につながる可能性を示唆していると言えます**。
**当院での前足歩き(FFS)の実践と改善例**
当院ではこの8年間、**60代〜70代の女性患者さん**を中心に、FFSを取り入れた**歩き方の指導(歩行改善訓練)**を行ってきました。
対象は、**変形性膝関節症**や**脊柱管狭窄症**や**変形性股関節症**を訴える方々です。
その結果として――
* 「**膝が痛くて階段を避けていたけれど、今は2階まで上がれるように**なった」
* 「**10分歩くと腰がつらかったけれど、今は20分歩けるようになった**」
といった声が増え、**前足歩きが保存療法の一環として有効である**ことをw実感しています。さらに、これは持続可能な改善も示唆していると考えます。
**ご自宅でできる!簡単な前足歩き(FFS)のコツ**
FFSと聞くと少し難しそうに感じるかもしれませんが、以下の3点を意識するだけで、誰でも実践可能です。
1. **背筋を伸ばし、骨盤前傾姿勢をとる**
2. **足の前方(母趾球あたり)から、そっと着地する**
3. **股関節を狭く、小股で歩くように意識する**
最初はふくらはぎに少し張りを感じるかもしれませんが、それは正しく筋肉が使えている証拠です。無理せず、まずは**5〜10分程度の練習**から始めてみてはいかがでしょうか。
**歩き方を見直すことで、膝や腰の痛みをやわらげる第一歩に**
「年齢のせい」と諦めていた膝や腰の痛みも、**歩き方を見直すことで、より持続可能で快適な日常生活につながる可能性**があります。
今回の論文から特に**60代以降の方に多い変形性膝関節症や脊柱管狭窄症、股関節症**においては、“前足歩き”のような歩行フォームの改善が症状の緩和に役立つと言った仮説の裏付けになるのではないでしょうか。
ご自身に合った方法を見つけるためにも、**専門家のアドバイスを受けながら取り組むことがおすすめ**します。
当院では、**FFS歩行を取り入れた歩行改善プログラム**を丁寧にサポートしております。
参考論文
1. Kulmala JP, Avela J, Pasanen K, Parkkari J. *Forefoot strikers exhibit lower running-induced knee loading than rearfoot strikers*. Med Sci Sports Exerc. 2013;45(12):2306-13.
2. Delgado TL, et al. *Effects of foot strike on low back posture, shock attenuation, and comfort in running*. Med Sci Sports Exerc. 2013;45(5):873–879.
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