はじめに
当院の腰痛患者さん(50代〜60代)が、「実は以前から耳鳴りで悩んでいる」「整体のほかに頭痛で内科に通ってる。原因がはっきりせず、薬だけが処方されている」そんな訴えをされます。当院には多いように思います。
そのような方も、姿勢矯正を通じていくと鎮静化していくケースがあります。個人的にその場合、内耳のリンパ液の量が、適切でないケースを疑っています。
そして背景には、潜在的な因子として、脊椎のゆがみや姿勢、日常の悪い習慣が関係している可能性があることが、実は近年の医科学的な研究からも少しずつ明らかになってきています。
そしてその状態は、一般的な意味での脳震盪(のうしんとう)とは異なる、「**極めて軽度な脳震盪(mild concussion)」**に相当する場合があると考えられます。
そこで今回は、2部に分けて掲載しています。合計4500文字(論文URL含む)
第一部:「軽度脳震盪とは」
第二部:「軽度脳震盪と日常生活」
結論:治りにくい耳鳴りやめまい、頭痛は軽い脳震盪が原因の炎症を疑える。悪い姿勢や歩き方の積み重ねで起こるため、姿勢改善が見られれば、長期的な鎮静につながると予測できる。
第一部:軽度(極微)の脳震盪症状とは何でしょう。
軽度脳震盪(mTBI)における頭蓋内のリンパ液や脳脊髄液(CSF)量・流れの変化について研究した3本の英語論文です。URLと日本語要約を記載しています。
① Cerebrospinal fluid levels of neuroinflammatory biomarkers are elevated months to years after concussion
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要約:
スポーツ関連脳震盪(SRC)後に長期的(数ヶ月〜数年)持続する**脳脊髄液中の炎症性マーカー(サイトカイン・ケモカインなど)**の上昇を観察。これはCSF内の炎症が慢性的に継続していることを意味し、脳内環境やCSF量・流れの変化が持続している可能性を示唆していますanalyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com+4sciencedirect.com+4pmc.ncbi.nlm.nih.gov+4pmc.ncbi.nlm.nih.gov。
② Meningeal lymphatic dysfunction exacerbates traumatic brain injury outcomes
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要約:
マウスモデルで軽い頭部衝撃を与えると、頭蓋内リンパ管の排液機能が2時間以内に低下し、最長2ヶ月間持続。これにより、CSFや間質液の排出障害が起き、脳内圧上昇や神経炎症が悪化することが報告されています。軽微な脳震盪でもリンパ系の流れが阻害される可能性があります pmc.ncbi.nlm.nih.gov。
③ MRI Evidence for Altered Venous Drainage and Intracranial Compliance in Mild Traumatic Brain Injury
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URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0055447
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要約:
mTBI患者では、内頸静脈を通る頭蓋内静脈ドレナージが減少し、代償的に他の静脈経路が増加。その結果、頭蓋内のコンプライアンス(圧変化に対する柔軟性)が低下し、推定ICP(頭蓋内圧)が健常者より高くなることが示されました。これはCSF流体力学が慢的に乱れている証拠です journals.plos.org。
1部まとめ
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CSF中の炎症マーカー増加 ➝ 脳震盪後にも長期的なCSF環境の乱れが持続。
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リンパ系の流れ阻害 ➝ 軽微な衝撃でも頭内の(リンパ液・脊髄液)排液障害が続く可能性。
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静脈ドレナージ異常と柔軟性低下 ➝ 頭蓋内圧の上昇やCSF力学の変化が確認されている。
これらの研究からわかってきたのは、「軽い脳震盪(のうしんとう)」であっても、脳の中は炎症を起こし、流れる**脳脊髄液(のうせきずいえき)**やリンパ液の量が増加することで、**頭の中の圧力**にまで変化が起きる可能性があるということです。このことは内耳への影響が容易に想像されるでしょう。
また、今は症状が軽くても、習慣的な原因を改善できなければ、**めまいや頭痛、耳鳴りが改善しにくくなる**ことが予想されます。
第1部参考文献(URL)
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Cerebrospinal fluid levels of neuroinflammatory biomarkers…
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10433539/ -
Meningeal lymphatic dysfunction exacerbates traumatic brain injury…
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7483525/ -
MRI Evidence for Altered Venous Drainage and Intracranial Compliance in mTBI
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0055447
第二部:「弱い脳震盪」と日常生活
脳震盪というと、スポーツ外傷や交通事故などの大きな衝撃を想像されるかもしれません。しかし、**10〜30g程度の重力加速度(頭部に加わる物理的な衝撃)**でも、繰り返し起これば「軽微な脳震盪」として神経機能に影響を及ぼすことが近年報告されています。
引用論文①:
“Head Impact Sensor Triggering Bias Introduced by Linear Acceleration Thresholding” (2021)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34622314/
→ 10〜30gの繰り返し衝撃が脳機能に影響する可能性を指摘。一般的センサーでは検出されにくい。
つまり、病院で画像検査に現れないが、軽い症状があるという「隠れ脳震盪」の存在が科学的に支持され始めているのです。
歩き方と脊椎の硬さが衝撃を増幅させる?
では、いったい何が普通の生活の中でこのような脳への衝撃になるのでしょう。そのカギは、「歩行スタイル」と「脊椎の柔軟性(または硬さ)」にあります。
通常、私たちは歩く・走る際、地面から足を通じて衝撃が上半身に伝わるのを足部・膝・股・腰・頸などの関節や筋肉で吸収しています。しかし、姿勢が悪く脊椎が固まってロックしている状態では、この吸収がうまくいかず、頭部にそのまま加速度(衝撃)として伝わってしまうのです。
引用論文②:
“Effects of spinal deformities on lower limb kinematics during walking” (2025)
https://www.nature.com/articles/s41598-025-88886-5
→ 脊椎の変形は歩行の安定性を低下させ、頭部への衝撃吸収を妨げる。
このように、「歩行のクセ」や「背骨の硬さ」が、日常動作における微小衝撃を慢性的に蓄積させ、耳鳴り・めまい・頭痛などの“原因不明の神経症状”を引き起こす背景となっている可能性があると言えるでしょう。
整体によるアプローチと反応性の違い
当院では、こうした軽度脳震盪様症状ですが、本来の依頼内容は別にあるのです。腰や、膝、肩こり改善のために頸椎・胸椎・骨盤の調整を含めた姿勢矯正の施術を行ってきました。結果、患者さまの変化として「歩行が楽になった」「いつの間にか頭痛が弱くなってきた」「なんだか耳鳴りが気にならなくなった」と改善を口にされるのです。
特に反応が良いのは、「構造的ゆがみが軽度な方」「慢性的に乗り物に長時間乗っていない方」「自律神経が過敏でない方」です。一方で、高度な脊椎の側弯や首の関節過可動がある方は改善が遅く、少し長めの改善期間が予想されます。
引用論文③:
“Chiropractic management of the craniocervical junction in post‑concussion syndrome” (2017)
https://journal.parker.edu/article/78066-chiropractic-management-of-the-craniocervical-junction-in-post-concussion-syndrome-a-case-series
→ 頚椎上部の矯正により、頭痛・耳鳴り・めまいが改善した例を報告。
第二部まとめ
「耳鳴りや頭痛がなかなか治らない」「病院では異常がないと言われた」。そうしたケースの背景には、悪い姿勢や歩行の繰り返しが生んだ“軽度脳震盪”が潜んでいることを疑うべきでしょう。
総論:
治りにくい耳鳴りやめまい、頭痛は軽い脳震盪が原因のことも。悪い姿勢や歩き方の積み重ねで起こるため、姿勢改善が長期的な回復につながります。 もし悪い姿勢に自覚があったり、腰や首、膝、股関節などの 不調があるようでしたら、 整体も方法の一つなのでしょう。
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お問い合わせはHPよりお願いいたします。
「姿勢矯正の専門学校」ライス整体
〒601-1371 京都府京都市伏見区醍醐上ノ山町20−9
第二部参考文献一覧(本文引用順)
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Head Impact Sensor Triggering Bias (2021)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34622314/ -
Effects of spinal deformities on walking (2025)
https://www.nature.com/articles/s41598-025-88886-5 -
Chiropractic for post-concussion syndrome (2017)
https://journal.parker.edu/article/78066-chiropractic-management-of-the-craniocervical-junction-in-post-concussion-syndrome-a-case-series